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東京地方裁判所 平成6年(ワ)13949号 判決 1996年9月30日

スウェーデン国 エス-二二一 八六 ルンド ルーベン ラウジングスゲータ

原告

エービーテトラ パツク

右代表者

ゴスタ セブレル

東京都千代田区紀尾井町六番一二号

原告

日本テトラパック株式会社

右代表者代表取締役

柚木善清

右両名訴訟代理人弁護士

相馬功

右訴訟復代理人弁護士

杉田禎浩

右輔佐人弁理士

田中義敏

清水正三

三好秀和

岩﨑幸邦

伊藤正和

鹿又弘子

徳島県板野郡北島町太郎八須字西の川一〇番地の一

被告

四国化工機株式会社

右代表者代表取締役

植田道雄

右訴訟代理人弁護士

久田原昭夫

久世勝之

右輔佐人弁理士

岸本瑛之助

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、別紙被告装置目録記載の包装材料をヒートシールする装置(以下「被告装置」という。)の製造、販売をしてはならない。

二  被告は、その占有に係る被告装置及び専ら被告装置の製造に使用される部品を廃棄せよ。

三  被告は、その占有に係る被告装置の製造設備を廃棄せよ。

四  被告は、被告装置の補修、修理及び調整をしてはならない。

五  被告は、原告エービー テトラパック(以下「原告エービーテトラ」という。)に対し、一四五八万円及びこれに対する平成六年八月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、第一に、原告エービーテトラが後記一1の特許権(以下「本件特許権」という。)に基づき、原告日本テトラパック株式会社(以下「原告日本テトラ」という。)が本件特許権の専用実施権に基づき、被告に対し、被告装置の製造、販売、補修、修理及び調整行為が本件特許権を侵害するとして、その行為の差止め、並びに、被告が占有する被告装置、専ら被告装置の製造に使用される部品及び被告装置の製造設備の廃棄を求めるものであり、第二に、原告エービーテトラが、被告に対し、被告による平成二年九月二〇日から同六年七月一四日までの間の被告装置を備えた液体食品用充填機を少なくとも一台九〇〇〇万円で九台製造販売した行為が、本件特許権及びその仮保護の権利を侵害したとして、同侵害行為による実施料相当額の損害一四五八万円(右販売合計額八億一〇〇〇万円に被告装置の利用率三〇パーセントを乗じ、これに実施料率六パーセントを乗じた金額)及びこれに対する不法行為より後の日からの遅延損害金の支払いを請求している事案である。

一  基礎となる事実(3、5を除き争いがない。)

1  原告エービーテトラは、次の本件特許権を有しており、原告日本テトラは、本件特許権の専用実施権を有している。

(一) 特許番号 第一七九五五六五号

(二) 発明の名称 包装材料をヒートシールする方法及び装置

(三) 出願 昭和五七年一〇月八日

優先権主張 スウェーデン国 優先日 昭和五六年一〇月八日

(四) 出願公告 平成二年九月二〇日

(五) 登録 平成五年一〇月二八日

2  本件特許権の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、本判決添付の手続補正書(以下「本件手続補正書」という。)の該当欄記載のとおりである(以下同特許請求の範囲欄(3)項記載の特許発明を「本件発明」という。)。

3  本件発明は、牛乳、果実飲料等に用いられる使い捨て方式の包装容器等に使用される包装積層材料をヒートシールする装置に関するものである。互いに対向した包装積層材料の外側の熱可塑性材料同士を一時的に熱と圧力によって液密状態にヒートシールするために、細長いシールジョウを積層材料に押しつけるのであるが、本件発明は、次のような特徴の構造、機能を有するシールジョウを備えた装置に関するものであり、その構成要件は、次のとおりである(前記2の事実及び甲二、三)。

A 熱可塑性材料層(3)、導電性材料層(4)、及び繊維質材料の支持層(1) の積層材料同士(10、11)を、該熱可塑性材料(3)が接触するように互いに重ね合わせ、これら材料同士(10、11)をシール帯域(13、14)内でシールジョウ(5)と対向ジョウ(12)との間で圧して加熱し、冷却固化させるようにして、前記積層材料同士(10、11)をヒートシールするための装置において、

B<1> 前記シールジョウ(5)は、前記対向ジョウ(12)へ前記積層材料(10、11)を押しつけるための押圧表面を有する本体(6)と、

<2> 前記本体(6)の押圧表面に設けられ、作用面と該作用面から突出するほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)とを有する導電性加熱棒(7)とを含み、

C<1> 前記加熱棒(7)に高周波電力を印加しつつ、

<2> 前記突条(9)のほぼ矩形の平らな平面で前記シール帯域(13、14)の中央部分(13)を押しつけ、

<3> これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分でせき止められるようになっている

D ことを特徴とする装置

4  被告は、被告装置を製造、販売している。

5  被告装置を本件発明の構成要件に対応させて分説すれば、次のとおりである。(前記3、4の事実)

a 熱可塑性材料層(103)、導電性材料層(104)及び繊維質材料の支持層(101)の積層材料同士(110、111)を、該熱可塑性材料層(103)が接触するように互いに重ね合わせ、これら材料同士(110、111)をシール帯域(113、114、115、116)内でシールジョウ(105)とゴム製対向ジョウ(112)との間で圧して加熱し、シール帯域(113、114、115、116)内で、前記積層材料同士(110、111)をヒートシールするための装置であって、

b<1> 前記シールジョウ(105)は、前記対向ジョウ(112)へ前記積層材料同士(110、111)を押しつけるための押圧表面を有する本体(106)と、

<2> 前記本体(106)の押圧表面に設けられ、作用面と該作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する左右突条(109a)及び高低二段で低い段が左右突条(109a)の突条と同じ高さである該作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する中央突条(109b)とを有する導電性加熱棒(107)とを含み、

c<1> 前記加熱棒(107)に高周波電力を印加しつつ、<2> 前記本体(106)の押圧表面で前記対向ジョウ(112)へ前記積層材料同士(110、111)を押しつけるようになっており、前記左右突条(109a)のほぼ円弧状の先端面では前記シール帯域(113114、115、116)の長さ方向の両端部でかつ外縁(E)寄りの部分を、中央突条(109b)のほぼ円弧状の先端面では前記シール帯域(113、114、115、116)の長さ方向の中央部でかつ外縁(E)にそう部分をそれぞれ押しつけるようになっている

d 包装材料をヒートシールする装置。

二  争点

1  被告装置の構造b<2>は、本件発明の構成要件B<2>を充足するか。

2  被告装置の構造c<2>は、本件発明の構成要件C<2>を充足するか。

3  被告装置の構造は、本件発明の構成要件C<3>を充足するか。

三  争点に関する当事者の主張

1  原告ら

(一) 本件発明の作用効果

本件発明は、以下の作用効果を奏する。

(1) シールジョウ(5)が互いに向き合って動き、その間に置かれた包装積層材料(10、11)を一緒に押し付け始めると同時に、シールジョゥ(5)の導電性加熱棒(7)が高周波電源に接続される。

(2) このようにして、包装積層材料のアルミニウム層(4)内に交番磁界が誘導され、それによって、これらが前記加熱棒(7)の表面に対応する領域内で隣接する熱可塑性の層の溶融温度よりかなり高い温度にまで加熱される。

(3) 生成された熱は、アルミニウム層間に位置する熱可塑性の層(3)に直接伝達され、それによってこれらが溶融し、流体となる。

包装積層材料を突条(9)と同じ高さで一緒に押しやる高い圧力のために、溶融熱可塑性材料は、シール帯域(13、14)、全体の中の高圧の領域(13)から隣接部分(14)に走り、又は流れ込む。

(4) シール帯域(13、14)の外方の領域で互いに対向して位置する熱可塑性材料層(3)は、引き続き固体の状態を保ち、互いに対向して押し付けられるので、溶融熱可塑性材料は、それ以上シール帯域外方に流出できずに隣接部分(14)に留まり、ここで圧力帯域(13)と平行に伸びるふくらみ部分(15)を形成し、その中で互いにシールされた二つの層が混合される。

(5) 圧力帯域(13)内には、表面の凹凸等のために絞り出され得ない微量のプラスチック材料のみが残り、一方、この帯域の隣接部分(14)に形成されたふくらみ部分(15)には、よく混合されたプラスチックの余剰分が包含され、実用上充分な強さのシールが二つの層の間に得られる。

(6)圧力帯域(13)から隣接部分(14)に至る流れが非常に速いので、流動するプラスチック材料内に生ずる乱流によって互いに対向して位置する二つの層の間からのプラスチック材料のよい混合が保証され、したがって表面に存在するいかなる表面酸化物またはその他の不純物(例えば包装内容物の残留物からの)でもプラスチック内に効果的に混合され、それ故シールの強さを損うような不純物のいかなる凝集性の膜も残存することがない。

(二) 被告装置の作用効果

被告装置は、以下の作用効果を奏する。

(1) シールジョウ(105)が互いに向き合って動き、その間に置かれた包装積層材料(110、111)を一緒に押し付け始めると同時に、シールジョウ(105)の導電性加熱棒(107)が高周波電源に接続される。

(2) このようにして、包装積層材料の導電性材料層(104)内に交番磁界が誘導され、それによって、これらが前記加熱棒(107)の表面に対応する領域内で隣接する熱可塑性材料層(103)の溶融温度よりかなり高い温度にまで加熱される。

(3) 生成された熱は、導電性材料層間に位置する熱可塑性材料層(103)に直接伝達され、それによってこれらが溶融し、流体となる。

包装積層材料を左右突条(109a)及び中央突条(109b)と同じ高さで一緒に押しやる高い圧力のために、溶融熱可塑性材料は、シール帯域(113、114、115)、全体の中の圧力領域(113)から隣接部分(114、115)に走り、又は流れ込む。

(4) シール帯域(113、114、115)の外方の領域で互いに対向して位置する熱可塑性材料層(103)は、引き続き固体の状態を保ち、かつ、互いに対向して押し付けられるので、溶融熱可塑性材料は、それ以上シール帯域外方に流出できずに隣接部分(114)に留まり、ここで圧力帯域(113)と平行に伸びるふくらみ部分を形成し、その中で互いにシールされた二つの層が混合される。

(5) 圧力帯域(113)内には表面の凹凸等のために絞り出され得ない微量の熱可塑性材料のみが残り、一方、この帯域の隣接部分(114)に形成されたふくらみ部分には、よく混合された熱可塑性材料の余剰分が包含され、実用上充分な強さのシールが二つの層の間に得られる。

(6) 圧力帯域(113)から隣接部分(114)に至る流れが非常に速いので、流動する溶融熱可塑性材料内に生ずる乱流によって、互いに対向して位置する二つの層の間からの熱可塑性材料のよい混合が保証され、したがって、表面に存在するいかなる表面酸化物またはその他の不純物(例えば包装内容物の残留物からの)でも熱可塑性材料内に効果的に混合され、それ故シールの強さを損うような不純物のいかなる凝集性の膜も残存することがない。

(7) 前記溶融熱可塑性材料は冷却固化して積層材料同士をシールする。

(三) 被告装置と本件発明との対比

被告装置の構造a、b<1>c<1>、dは、それぞれ本件発明の構成要件A、B<1>、C<1>及びDを充足する。

被告装置の構造b<2>、c<2>、及び、前記(二)の作用は、以下のとおり、本件発明の構成要件B<2>、C<2>、C<3>も充足し、被告製品は、本件発明の技術的範囲に属する。

(1) 構成要件B<2>について

ア 被告装置の構造b<2>では、導電性加熱棒(107)の長手方向に沿って3個の「突条」が離散的に形成され、それらの高さも均一ではないが、本件発明の構成要件B<2>では、長手方向に沿って「突条」がどのような高さで、どのように配置されているかは特定されていないのであり、右構成要件B<2>の「突条」は、本体の底面からの高さいかんにかかわらないし、長手方向に沿って直線状に連続延伸するもののみならず、途中の一部に中断を含むもの(すなわち、離散的に配置されるもの)等を含むものである。

また、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、突条に関し次の記載がある。

「前記突条即ち細長い高くなった面をシールジョーに設けることにょり、組み合わされた二つの包装積層材料に押し付けられた時に、積層材料が非常に高い圧力で互いに押し付けられる線状のシール帯域を作るジョーが得られる。シールジョーには突条のみならず隣接領域をも含む積層材料を加熱する領域が具備されているので、加熱された熱可塑性材料は線状領域から隣接領域へ高速で押しやられ、それにより既述のように効果的な混合と、従って優れたシールが得られる。」

(本件特許公報四欄四一行ないし五欄七行)

「加工面8には、棒7内に形成された突条9が設けられる。突条9は、断面がほぼ長方形であり、高さが積層材料の厚さの0・2ないし0・8倍、なるべくは0・5倍の範囲であり、幅が包装積層材料の厚さにほぼ等しいものである。」(本件特許公報五欄三六ないし四一行)

「本発明によるシールジョーは、材質ならびに形式の異なった包装容器のシールの必要条件を満たすために、本発明の概念の範囲内で、これを種々の方法で修正することができる。」(本件特許公報六欄九ないし一二行)

「包装積層材料を突起9と同じ高さで一緒に押しやる高い圧力(約100kg/cm2)のために、溶融熱可塑性材料はシール帯域13、14全体の中の高圧の領域13から隣接部分14に走り、または流れ込む。」(本件特許公報七欄一四ないし一八行)

本件発明の突条に関し、出願人が認識し、明細書において開示している発明の概念は、右のとおりであり、右発明の概念の範囲内で、これを種々の方法で修正できるものである。すなわち、突条をシール帯域全体の長さにわたり連続した一本のものに形成するか、又は連続した一本のものではなく中断して形成するか、突条の高さを全体にわたって同一に形成するか、又は一部分は高く、一部分は低く形成するかは、シール帯域の包装積層材料の厚さ、又はチューブの継ぎ目の部分であるか両縁部であるか等による強圧すべきか否かの判断によって定まり、単なる当業者の設計事項に属することであって、本件発明の範囲内にあるものである。

よって、被告装置の構造b<2>は、この点に関して本件発明の構成要件B<2>を充足する。

イ 被告装置の構造b<2>では「突条」が「ほぼ円弧状の先端面を有する」のに対して、本件発明の構成要件B<2>では「ほぼ矩形の平らな先端面を有する」とされている。

被告は、この点に関し、突条の断面はほぼ矩形でその先端面は平らでなければならない旨主張する。

<1> しかし、右構成要件B<2>における「平らな先端面」は、「ほぼ矩形の平らな先端面」であるから、純粋に幾何学的に「平らな」ものに限られず、本件発明の目的及び作用効果からしても、例えば、突条の高さの五ないし一〇パーセント程度の変動は誤差の範囲であり、このような凹凸を有する平面は当然「平らな先端面」に含まれる。そして、被告装置の「ほぼ円弧状の先端面を有する突条」における高さの変動もこの意味での凹凸にほかならない。

別紙被告装置目録第5図に記載の左右突条109aを検討してみると、その全幅を一としたとき、先端部の両側の幅〇・三の範囲は五パーセントの高さ変動以内にあり、幅〇・五の範囲は一〇パーセントの高さ変動以内にある。そして、このような性質は、同図に記載された形状に限らず、円弧状の形状を有する先端部に共通の性質である。したがって、少なくとも、前記先端部両側の幅〇・三ないし〇・五の範囲は、形状としても「平らな先端面」に相当するのであり、被告装置の突条は「平らな先端面」を有するのである。

<2> また、矩形の両肩部をアール面としたものは、「ほぼ矩形」ということもできるし、「ほぼ円弧状」と言うこともできるのであり、いずれも本件発明の作用効果を達するから、「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」に「ほぼ円弧状の先端面を有する突条」が含まれないと解すべき理由はない。

そして、「ほぼ」とは、漢字では「略、粗」と表記されるものであり、「おおかた、おおよそ、大略」の意味である。したがって、右「突条」は、正確な矩形である必要はなく、本件特許公報の第2図(Fig.2)に示されるような、本体(6)の底面に対して直角をなす下方向へ突出する左右一対の垂直面と、この左右一対の垂直面に対して直角をなす水平方向へ延伸する底面とを有するものだけでなく、本来の作用効果を奏する限りにおいて、矩形に類似する形状のものも含むのである。本件明細書の発明の詳細な説明の欄にも「矩形の平らな先端面を有する突条」と厳密な意味で限定した趣旨の説明はなく、右第2図の実施例について、突条9の断面がほぼ長方形である(本件特許公報五欄三八行)ことが述べられているのみで、本件発明の作用効果等の記載において、突条が矩形状であることについての記載は全くない。したがって、矩形に類似した形状を有し、かつ、「溶融した材料の側方への待避が積極的であり、不純物の持ち去りが充分にできる」(平成五年一月一八日付け審判請求理由補充書(以下「本件審判請求理由補充書」という。)八頁一二ないし一四行)機能を有する「突条」は、本件発明の「ほぼ矩形」の「突条」に含まれるのである。

そして、被告装置の「突条」の断面形状を示す別紙被告装置目録第5図、第6図によれば、被告装置の「突条」は、本体(106)の底面に対して直角をなす下方向へ突出する左右2つの垂直面を有し、この2つの垂直面は「ほぼ円弧状」の底面で結ばれている。したがって、作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する被告装置の「突条」も、右底面に対して直角をなす2つの垂直面を含む3つの面を有するほぼ矩形の平らな先端面を有する「突条」ということができる。

本件発明の作用効果は、突条すなわち細長い高くなった面をシールジョウに設けることによって達成するものであり、「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」も「ほぼ円弧状の先端面を有する」「突条」も、いずれも弾性を有する繊維質材料の支持層を介して溶融熱可塑性材料を押圧し、「突条」の下方の溶融熱可塑性材料は曲面状に変形した繊維質材料層の底面により左右方向へ押し出され流出するのであって、その流出の態様は、被告装置の構造b<2>の「突条」による場合も本件発明と全く同一であって、全く同様の作用効果を奏する。本件発明の作用効果を達成するためには、高い圧力(約一〇〇kg/cm2)で二つの包装積層材料を押し付けることのできる細長い高くなった面を有する突条であれば足り、高くなった面の形状を、ほぼ円弧状とすることは本件発明の概念に含まれるのである。

<3> 被告は、本件発明の出願経過に照らして、原告らの「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」が、「ほぼ円弧状の先端を有する突条」を含むとする主張は禁反言の原則から許されない旨主張する。

しかし、本件発明の出願の当初から本件発明の登録に至る補正の経過と内容をみても、本件発明の「突条」を厳密な意味での「矩形の平らな先端面を有する突条」に限定したものと解すべき理由はない。

確かに、本件発明の特許請求の範囲の記載には「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」とあり、出願経過をみると、「ほぼ線状の突起(9)」→「突条9」→「平らな平面を有する突条9」→「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」と順次補正されてきている。

この補正の変遷について、その補正内容を具体的にみると、「ほぼ線状の突起」、「突条」及び「平らな平面を有する突条」という表現は、立体である突条について立体的に十分表現されておらず、必ずしも適切な表現とはいえなかったのに対して、「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」は突条を立体的に表現しており、突条を立体的に把握できる。他方、突条についての右特許請求の範囲の補正に対応して明細書の作用効果の記載は一切補正されていない。このことは、突条についての特許請求の範囲の補正によっても本件発明の作用効果は変わらないことを意味する。つまり、突条についての特許請求の範囲の表現は補正によって異なるものとなっても、その突条のもつ技術的意味はその補正の前後において同じなのである。

このように、本件発明は、突条を、本件発明の突条の形状に補正することによってはじめて特許が付与されたものでないことは、突条の補正の技術的意味がその前後において変わらないことからみても明らかである。

そして、原告エービーテトラは、拒絶査定に対する不服審判請求時に、特許請求の範囲について、「加熱棒(7)に高周波電力を印加しつつ」と加える補正をしており、この補正が審判の審理において実質的に意味をもつたと考えられる。

また、右審判請求時の「矩形状の面で押圧する」旨の主張は、本件特許公報の第2図記載の実施例のものを例として述べたものであり、この主張の内容は、明細書の補正の内容となっておらず、明細書の記載に根拠のない審判請求時の主張は、侵害訴訟において意味のないものである。

また、原告エービーテトラは、本件審判請求理由補充書において、「・・・ならびにシール帯域(13、14)の中央部分を矩形状の面で押圧する点で異なっている。」(八頁四ないし六行)、「・・・また矩形状の面で強くシール帯域(13、14)を押圧するため、溶融した材料の側方への待避が積極的であり、不純物の持ち去りが充分できる」(八頁一一ないし一四行)と主張している。右主張は、要するに、本件発明の「突条」では、ほぼ矩形の先端面で強くシール帯域を押圧するため、溶融した材料の側方への待避が積極的であり、不純物の持ち去りが充分できるというものである。

被告装置の「突条」も、「矩形」に類似した形状を有し、かつ、ヒートシールにあたって、その先端面でシール帯域を押圧するため、溶融した材料の側方への待避が積極的であり、不純物の持ち去りが充分できるものである。

したがって、被告装置の「突条」は、審判請求時に本件手続補正書において補正され審判請求理由補充書において主張された「突条」に含まれるのである。

よって、被告装置の「突条」が本件発明の「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」に含まれる旨の原告らの主張は、原告らが出願過程においてした主張と矛盾するものではなく、原告らの主張は、禁反言の原則に反するものではない。

ウ 以上のとおり、本件発明にいう「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」の中には、厳密な意味での「矩形の平らな先端面を有する突条」だけでなく被告装置目録記載のような「ほぼ円弧状の先端面を有する…突条」も含まれるのであり、被告装置の構造b<2>は、本件発明の構成要件B<2>を充足する。

(2) 構成要件C<2>について

被告装置の構造c<2>では、「左右突条(109a)」は、「シール帯域」の「外縁よりの部分」を押し付け、かつ、「中央突条(109b)」は、「シール帯域」の「外縁に沿う部分」を押し付けるのに対して、構成要件C<2>では、「突条」は「シール帯域の中央部分」を押し付ける。

しかし、本件明細書の発明の詳細な説明の欄の記載によれば、右「シール帯域の中央部分」とは、右「突条」により積層材料内で高圧が発生する領域を意味するものである。本件明細書の発明の詳細な説明の欄において、「シール帯域の中央部分(13)」について具体的に言及している箇所を検討すると、本件特許公報四欄四四行ないし五欄二行には「積層材料が非常に高い圧力で互いに押し付けられる線状のシール帯域を作るジョーが得られる」(この記載における「シール帯域」とは、本件明細書の他の箇所における「圧力領域(13)」を意味する。)と記載され、本件特許公報七欄一六ないし一八行には「溶融熱可塑性材料はシール帯域13、14全体の中の高圧の領域13から隣接部分14に走り、または流れ込む」と記載され、同欄二三行ないし二五行には「ここで細長い圧力領域13と平行にのびるふくらみ部分15を形成し、」と記載されている。つまり、番号13で特定される領域は、「積層材料層内で高圧が発生する領域」として把握され説明されているのである。さらに、番号13で特定される領域が、幾何学的な意味での「中央」に存在することを積極的に説明する記載は本件明細書には存在しない。本件特許公報八欄四二行には、「中央領域13」なる記載があるがこれも当該領域13が幾何学的な意味での「中央」に存在していることを説明するものではない。本件特許公報五欄四一ないし四四行には、「かくしてシールジョー5の作用面8は積層材料を加熱する中央に在る領域を具備し、これに一方では突条9が、また他方では突条の側に少なく共一つの隣接領域が具えられる。」と記載されている。このことは、本件発明において「突条」の存在する領域が「シール領域13、14」の端部に存在してもよいことを積極的に説明している。したがって、右構成要件C<2>における「シール帯域の中央部分」は、右「高圧が発生する領域」のことを意味し、その幾何学的位置は、シール帯域13、14の「中央」のみならず「端部」である場合をも含むのである。

したがって、被告装置の構造<2>は、本件発明の構成要件C<2>を充足する。

(3) 構成要件C<3>について

前記(二)(2)のとおり、被告装置においても、高周波電力を印加した加熱棒(107)で積層材料同士を押し付けると、熱可塑性材料層(103)はシール帯域(113、114、115)内で溶融し、溶融した熱可塑性材料は導電性材料層(104)の表面より流出する。そして流出した溶融熱可塑性材料は、シール帯域(113、114、115)の外側の熱可塑性材料の溶融していない部分でせき止められる。

したがって、被告装置は、本件発明の構成要件C<3>を充足する。

2  被告

被告装置は、以下のとおり、本件発明の構成要件B<2>、C<2>、C<3>を充足しないから、本件発明の技術的範囲に属しない。

(一) 構成要件B<2>について

(1) 被告装置の構造b<2>では、左突条(109a)、中央突条(109b)及び右突条(109a)相互間に大きな間隔があり、かつ左右突条(109a)と中央突条(109b)とは一直線上にないから、本件発明の構成要件B<2>の突条(9)とはこの点で異なる。

原告らは、本件発明の構成要件B<2>の突条の配置及び高さについて、本件発明では突条の高さ及び配置は特定されておらず、本件発明の突条は、離散的に形成され、高さが不均一なものも含む旨主張する。

しかし、本件発明の構成要件B<2>の突条は、シール帯域の全体の長さ以上を有する「本のものが連続的に作用面に配置されたものでなければならない。なぜなら、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、次の記載があり、本件明細書の発明の詳細な説明の欄にある本件発明の目的を達成しようとすれば、突条は当然右のようなものでなければならないからである。

すなわち、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、「シールが所望の強さと液密性とを有するためには、共にシールすべき二つの熱可塑性の層が必ず清浄で不純物の無いことが必要である。このような場合には熱可塑性の各層の完全な融合を得ることができ、その結果、強い高密封性の点から見て最適のシールがもたらされる。熱可塑性の層の上には通常、熱可塑性の層の押し出しと共に包装積層材料上に形成される薄い酸化物の被膜が存在するために熱可塑性の各層の完全な融点が往々にして阻害され、従ってシールは理論的には可能な強さと密封性とを得られない。熱可塑性の層の表面には、例えば、更にシールを阻害する内容物の残留物のような別の種類の不純物も生ずる可能性がある。これは内容物が在る間に積層材料のシールが行われる、即ちシールを行い得る前に互いに対向して置かれた熱可塑性材料の表面間のすきまから内容物をまず押し出さなければならない、という形式の包装製造に特有の問題である。しかし実際問題として内容物は完全には絞り出されずに微量の残留物が残り、これがシールを弱める。本発明の目的は、前述の全ての難点が回避され且つ得られたシールが最適の性状を有するように前述の形式の包装積層材料をヒートシールすることのできる方法を提供することを目的とする。本発明の更に目的とするところは、たとえ包装積層材料が例えば酸化物、包装内容物の残留物、あるいは残渣のような不純物で覆われていても最適なシールを可能にする包装積層材料をヒートシールする方法を提供することにある。」(本件特許公報三欄二一行目ないし四欄五行目)と記載されている。

また、原告ら自身、本件発明の作用効果として、「シール帯域(13、14)の外方の領域で互いに対向して位置する熱可塑性材料層(3)は、引き続き固体の状態を保ち、互いに対向して押し付けられるので、溶融熱可塑性材料は、それ以上シール帯域外方に流出できずに隣接部分(14)に留まり、ここで圧力帯域(13)と平行に伸びるふくらみ部分(15)を形成し、その中で互いにシールされた二つの層が混合される。・・・ふくらみ部分(15)にはよく混合されたプラスチックの余剰分が包含され、実用上充分な強さのシールが二つの層の間に得られる」(前記三1(一)(4)(5))と主張している。すなわち、本件発明においては、右のような目的を達成するためには、まず、<1>二つの熱可塑性の層の間の不純物、内容物を押し出さなければならないし、<2>不純物で覆われていても最適なシールを可能にする手段が必要である。

そして、<1>の効果を得るためには、突条はシール帯域全体の長さにわたり連続した一本のものでなければならない。なぜなら、連続した一本のものでなく中断していて間隙があれば、二つの熱可塑性の層の間の不純物、内容物を押し出す所望の効果を得ることができないからである。また、<2>のためにも、突条はシール帯域全体の長さにわたり連続した一本のものでなければならない。なぜなら、シールの強度を充分なものにするためには、シール帯域の全体の長さにわたりふくらみ部分を形成することが必要となり、突条が連続した一本のものでなく中断していて間隙が存在すれば、その効果を得ることができないからである。

本件発明にいう突条は、二つの熱可塑性の層の間の不純物、内容物を押し出すためのものであり、また構成要件C<3>にある、「せき止め」により、(本件明細書に作用効果として記載されている)実用上十分な強さのシールを二つの層の間に得られるふくらみ部分を形成するためのものでなければならず、そのためには、連続したものでなければならない。

したがって、被告の装置の構造b<2>の突条は、本件発明の作用効果及び特許請求の範囲の記載に照らして、本件発明の構成要件B<2>の突条と全く異なるものというほかなく、これを単なる設計事項とする原告らの主張は失当である。

(2) 次に、本件発明の構成要件B<2>の突条(9)の高さは全体にわたって同一でなければならない。なぜなら、本件発明の右突条(9)は「平らな先端面を有する」ものでなければならず、高さは特定されていないが「平らな」ことは特定されており、「平らな」とは突条全体にわたって平らなことだからである。

ところが、被告装置の構造b<2>中央突条(109b)は、高低2段になっているから、その先端面は平らでなく、本件発明の構成要件B<2>の突条(9)とこの点でも異なる。

(3) 被告装置の構造b<2>における突条は、「ほぼ円弧状の先端面を有する」ものであって、本件特許請求の範囲の記載の文言、出願の経過に照らし、本件発明の構成要件B<2>における「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」とは異なるものである。

ア 原告らは、構成要件B<2>の突条の形状について、「突条」が「ほぼ矩形の平らな先端面を有する」とは「ほぼ矩形」であるから、右「平らな先端面」は「ほぼ平らな先端面」をも含み、ほぼ円弧状の先端面を有する突条は、左右二つの垂直面を有しその垂直面が円弧状の底面でむすばれておりほぼ矩形ということができ、かつ突条の下方の溶融熱可塑性材料層を効率的に隣接領域に押し出すという作用を奏するから、本件発明の「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」に含まれる旨主張する。

しかし、本件発明の構成要件B<2>の突条(9)が単に矩形ではなく、「ほぼ矩形」とあるのは、本件特許公報の第4図(Fig.4)に示されている突条(9)の断面が台形であるから台形を矩形に含ませるためには「ほぼ」と記載するほかないことに基づくものにすぎない。

すなわち、本件発明の突条(9)の断面は「ほぼ矩形」ではあるけれども、その先端面は平らでなければならない。本件発明の突条(9)が「ほぼ矩形」であることから、「平らな先端面」が「ほぼ平らな先端面」を含むということにならないことは、文言上も明らかである。原告らの、「ほぼ矩形の先端面が平らな突条」に「ほぼ円弧状の突条」が含まれる旨の主張は、日本語の文言の解釈としても暴論である。そして、本件特許公報の第2図及び第4図(Fig.2及びFig.4)に示されている突条(9)の先端もいずれも水平一直線であって、平らなことを表わしており、それ以外のものは何ら示されていない。本件発明の特許請求の範囲の記載に明確に「平らな先端面を有する」「平らな平面」と記載されている以上、先端が円弧状のものはこれとは別のものである。

また、原告らは、被告装置の突条に垂直面が存在することを理由とする主張をしているが、これは、本件特許請求の範囲の記載にない文言を持ち出して無理な解釈を試みようとしているにすぎない。本件発明の構成要件B<2>の突条は、ほぼ矩形であること、その先端面が「平ら」であることを要件としているのであり、被告装置がこの要件を充足していないことは明らかである。

そのほか、原告らは、本件発明や被告装置の作用効果についても主張しているが、原告らの主張する作用効果は、突条の存在により当然生ずる作用効果をいうにすぎず、本件特許請求の範囲の記載にいう先端面の形状により生ずる特有の効果ではない。このような突条一般の有する作用効果が同一であることから本件発明の突条に先端が円弧状の突条を含まれる旨の主張は、それ自体失当である。特許請求の範囲において、「作用面から突出するほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」と明らかに突条(9)の形状が限定されているのである。

イ 原告らの構成要件B<2>についての主張は、本件特許権の出願経過に即しても、禁反言の原則に照らし、許されないものである。

本件特許権は、以下のとおり、その突条の形状について補正がなされ、限定が加えられている。

<1> 出願時の特許請求の範囲の記載では、突条は「ほぼ線状の突起(9)」と表現されていたところ、平成元年一二月一二日付け拒絶理由通知書において、発明の構成が不明確である旨指摘された。

<2> これに対し、平成二年三月一二日付け手続補正書において、突条は単に「突条9」と訂正された。

<3> その後異議申立に対応し、異議答弁書とともに提出された平成四年一月二三日付け手続補正書において、突条は「平らな平面を有する突条9」と訂正された。

<4> これに対し、突条を有するヒートシール装置に関するフランス特許出願公開公報(乙一。以下「フランス特許公報」という。)により、新規性なしとの異議決定がなされ、拒絶査定通知がなされた。

<5> 右拒絶査定に対して、平成四年九月三〇日付けで本件手続補正書が提出され、突条について現在の特許請求の範囲の記載である「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」と訂正された。この補正による訂正(限定)は、シールジョウの作用面に突条領域を呈する構成がフランス特許公報に示され、公知であったので、拒絶査定を回避するためになされたものである。

<6> 右補正書による訂正をもとに、本件審判請求理由補充書が提出されたが、そこには「シール帯域(13、14)の中央部分を矩形状の面で押圧する点で異なっている。」(同八頁四ないし六行目)、「矩形状の面で強くシール帯域(13、14)を押圧するため、溶融した材料の側方への待避が積極的であり、不純物の持ち去りが充分にできる」(同八頁一一ないし一四行目)という記載がある。

以上の補正等の結果、本件発明は、登録に至ったのであり、原告エービーテトラは、突条の平らな平面で押圧することにより、効果的に溶融熱可塑性材料層を待避させることができる点に、顕著な作用が得られるとし、突条の形状としては様々な形状が考えられるなか、当初無限定であった突条の形状を最終的に「ほぼ矩形の平らな先端面を有する」ものに限定し、これにより登録に至ったのである。

すなわち、原告エービーテトラが自ら補正をなし、かつ突条が「ほぼ矩形の平らな先端面を有する」ものであることに特許性を主張したにもかかわらず、原告らは、本件訴訟において、本件発明の「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」が、「ほぼ円弧状の先端を有する突条」を含む旨の主張をしているのであり、このような主張は、本件発明の出願経過に照らし、禁反言の原則から許されないものである。

なお、原告らの、作用効果については補正がなされていないから突条の技術的意味は変わっていない旨の主張については、詳細な説明中の作用効果の記載が補正されないまま残存していることを奇貨として、特許請求の範囲の文言の意味を拡張しようとするもので到底認められるべきものではない。そもそも技術的範囲の解釈において、仮に詳細な説明中に広い範囲の発明を記載していても、特許請求の範囲の記載において狭い範囲で記載している以上、狭い範囲の記載の特許請求の範囲に基づく技術的範囲しか主張できないという基本を無視したものである。補正により特許請求の範囲の記載が限定されている以上、仮にそれより広いとみられる詳細な説明の記載があったとしても、かかる広い詳細な説明の記載に基づいて「本件発明」の技術的範囲を拡張解釈できないことはいうまでもなく、作用効果に変更がないことは、原告らの主張の根拠にはなり得ない。

(4) 以上のとおり、「被告装置」は「本件発明」の構成要件B<2>を充足しない。

(二) 被告装置の構造c<2>は、突条でシール帯域の中央部分を押すものではないので、本件発明の構成要件C<2>を充足しない。

原告らは、同構成要件の中央部分とは、幾何学的な中央部分を意味するのではなく、「積層材料層内で高圧が発生する領域」をいうのであって、シール帯域内であればどこでもかまわない旨主張する。

しかし、まず「積層材料層内で高圧が発生する領域」という文言は、本件特許請求の範囲の記載にない文言であり、かかる文言に基づく主張は、それ自体失当である。

原告らのいう高圧領域とは突条によって押圧される箇所を意味するものである。すなわち、本件発明の構成要件C<2>のシール帯域の「中央部分」なるものは、シール帯域内でその如何なる部分に対し「高圧が発生する領域」を生ぜしめるか、言いかえればいかなる部分を突条によって押圧するかの場所を指示する文言が「中央部分」なのである。したがって、「中央部分」とは、結局その押圧される個所をシール帯域の中央にする旨を指示する文言であり、原告らのいう「積層材料層内で高圧が発生する領域」の位置を限定する文言であることは明らかである。

さらに、原告らは、本件明細書の「かくしてシールジョー5の作用面8は積層材料を加熱する中央にある領域を具備し、これに一方では突条9が、また他方では突条の側に少なく共一つの隣接領域が具えられる。」(本件特許公報五欄四一ないし四四行)という文言により、「本件発明」において突条の存在する領域が「シール帯域13、14」の端部に存在してもよいことを積極的に説明している旨主張する。

しかし、右の主張については、なぜそのように言えるのか意味不明であるし、数度の補正においてかろうじて許された特許請求の範囲の記載に照らし、このような記載から突条の位置がシール帯域内であればどこでもかまわないとする根拠にはなり得ない。

本件発明は、特許請求の範囲に、もともと「シール帯域以内」(本件特許公報の特許請求の範囲第4項)としか記載されていなかったものを、「シール帯域(13、14)の中央部分」と限定したのであるから、本件特許の出願経過からも原告らの主張は、禁反言の原則に照らし、許されないものである。

(三) 被告装置は、本件発明の作用的記載である構成要件C<3>に対応する作用を奏しないので、同構成要件を充足しない。

原告らは、被告装置においても、高周波電力を印加した加熱棒(107)で積層材料同士を押し付けると、熱可塑性材料層(103)は、シール帯域(113、114、115)内で溶融し、溶融した熱可塑性材料は導電性材料層(104)の表面より流出する旨主張する。

しかし、被告装置では、高周波電力を印加した加熱棒(107)で積層材料同士を押し付けると、熱可塑性材料層(103)はシール帯域(113、114、115、116)内で溶融するが、前記シール帯域(113、114、115、116)内で溶融したすべての熱可塑性材料が導電性材料層(104)の表面より流出することはなく、導電性材料層(104)の表面より流出する熱可塑性材料は、左右突条(109a)及び中央突条(109b)で押し付けられたシール帯域(113)部分のもののみである(本件特許請求の範囲では「シール帯域」より流出ではなく、「導電性材料層の表面」より流出とあるが、これがどのような状態を指すかは、本件特許公報第3図(Fig.3)をみればよく分かる。符号(4)が導電性材料層を示すが、シール帯域(13)では熱可塑性材料層(3)が導電性材料層(4)より流出した状態が明瞭に示されている。)。

原告らは、被告装置では、流出した溶融熱可塑性材料は、シール帯域(113、114、115)の外側の熱可塑性材料の溶融していない部分でせき止められる旨主張する。

しかし、被告装置においては、かかる作用をもたらすことはない。

まず、被告装置において、左右突条(109a)及び中央突条(109b)で押し付けられないシール帯域(114、115、116)内で溶融した熱可塑性材料は、導電性材料層(104)の表面からもともと流出しない。

本件発明の構成要件C<3>における「シール帯域(13、14)の外側」は、シール帯域(13、14)の両外側を意味し、「せき止める」とは溶融熱可塑性材料がシール帯域外方に流出することができないで中央部分(13)の両側の隣接部分(14)に留まらせることをいう。もしそうでなければ本件発明にいう作用効果が生じないことになるからである。これらのことは、本件明細書の発明の詳細な説明の欄の「シール帯域(13、14)の外方の領域で互いに対向して位置する熱可塑性の層(3)は引き続き固体の状態を保ち、互いに対向して押し付けられるので、溶融熱可塑性材料はそれ以上シール帯域外方に流出できずに参照番号(14)で示される二つの帯域に留まり、ここで細長い圧力帯域(13)と平行に伸びるふくらみ部分(15)を形成し、その中で互いにシールされた二つの層が混合される。帯域(13)内には表面の凹凸等のために絞り出され得ない微量のプラスチック材料のみが残り、一方、この帯域の両側に形成されたふくらみ部分(15)」(本件特許公報七欄一八行目から二九行目まで)という記載から明らかである。

また、このことは、原告らが、「本件発明」の作用効果として、「シール帯域(13、14)の外方の領域で互いに対向して位置する熱可塑性材料層(3)は引き続き固体の状態を保ち、互いに対向して押し付けられる」ことによって「溶融熱可塑性材料はそれ以上シール帯域外方に流出できずに隣接部分(14)に留まり、ここで圧力帯域(13)と並行に延びるふくらみ部分(15)を形成」することによりせき止めがなされる旨主張していることからも一層明らかである。

これに対し、被告装置においては、溶融した熱可塑性材料のうち、シール帯域(113)の導電性材料層(104)の表面より流出した溶融熱可塑性材料は、シール帯域(113、114、115、116)の両外側の熱可塑性材料の溶融していない部分でせき止められることはない。なぜなら、被告装置においては、シール帯域(113、114、115、116)の一方の外側(別紙被告装置目録第5図、第6図における左外側)においては固体の熱可塑性材料は互いに押し付けられていないからせき止めようがないからである。なお、他方の外側(同各図右外側)においても、溶融した熱可塑性材料がせき止められることはない。

よつて、被告装置は、本件発明の構成要件C<3>を充足しない。

第三  争点に対する判断

一  被告装置の構造b<2>は、本件発明の構成要件B<2>を充足するか(争点1)。

1  本件発明の構成要件B<2>の「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」について

(一) 本件発明の構成要件B<1>、<2>のシールジョウ(5)は、「押圧表面を有する本体(6)」(B<1>)と「本体(6)の押圧表面に設けられ、作用面と該作用面から突出するほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)とを有する、導電性加熱棒(7)」(B<2>)というものである。

そして、矩形とは、「直角四辺形。長方形。さしがた。」を意味する用語であるから(広辞苑)、本件発明の構成要件B<2>における「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」とは、「ほぼ長方形の平らな先端面を有する突条」であるということができる。

(二) 本件発明の構成要件B<2>の突条の形状について、本件発明の出願経過をみると以下のとおりである。

構成要件B<2>の突条の形状については、出願公開時の特許請求の範囲の記載では、「作用面(8)がほぼ線状の突起(9)」とされていたが(乙五)、平成元年一二月一二日付け拒絶理由通知書で発明の構成が不明確である旨指摘されたのに対し(乙六)、平成二年三月一二日付け手続補正書で「前記作用面(8)には、突条(9)が設けられ」と補正され(乙七の2)、その後、同年九月二〇日に出願公告されたが、同三年七月二三日に二件の特許異議の申立がなされ、さらに、平成四年一月二三日付け手続補正書で「前記作用面(8)には、平らな平面を有する突条(9)が設けられ」と補正された(乙八)。

しかし、本件発明に対しては、平成四年三月二七日付けで、本件特許出願の優先権主張日より前にフランス国内で頒布された「平らな作用面を有する下部ジョーと外形がV状の作用面を有する上部ジョーを装備したヒートシール装置」が記載されているフランス特許出願公開公報二〇二七〇一二号(乙一、以下「本件フランス公報」という。)によつて、新規性がなく特許法二九条一項三号により特許を受けることができないとして、異議申立てを理由ありとする特許異議の決定及び拒絶査定がなされたため(乙三、九)、原告エービーテトラは、同年九月三〇日付けの本件手続補正書で、特許請求の範囲を全面的に補正して、構成要件B<2>の突条に関する部分を「作用面と該作用面から突出するほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」と補正し、また、構成要件C<2>も、「前記突条(9)のほぼ矩形の平らな平面で前記シール帯域(13、14)を押しつけ」と補正したものである(乙一〇)。

そして、原告エービーテトラは、その後に提出した本件審判請求理由補充書において、本件発明は、本件フランス公報記載の右公知技術の構成とは、「溶融可能の熱可塑性材料層、導電性材料層及び繊維材料の支持層との積層材料同士をヒートシールするものであり、これら材料をシール帯域内で加熱圧縮し、シール帯域中央部分で強く圧するようにし、熱可塑性材料層を溶融して、溶融材料を側方へ待避させ、同時に不純物粒子を持ち去るようにして融着効果を高める」点において一致しているが、しかし、「シール帯域(13、14)の中央部分を矩形状の面で押圧する点で異なつている」(同八頁四ないし六行目)、「矩形状の面で強くシール帯域(13、14)を押圧するため、溶融した材料の側方への待避が積極的であり、不純物の持ち去りが充分にできることなど甲第3号証(注 本件フランス公報)開示の構成からは、期待できない顕著な作用が得られるものである」(同八頁一一ないし一六行目)と主張し、その結果、同年五月二五日特許査定がなされたものである(甲一、乙三)。

このように、本件発明の構成要件B<2>においては、作用面から突出する突条の形状について、当初無限定であつたのを、原告エービーテトラは、これをまず「平らな平面を有する突条」と補正し、その後、本件フランス公報記載の公知技術によつて、新規性がないとして拒絶査定がなされたため、同公知技術における外形がV状の作用面を有する突条に対し、本件発明は「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」を有するものであると限定し、かつ、本件発明は、突条の短形状の平らな面で押圧することにより、効果的に溶融熱可塑性材料層を側方へ待避させることができ、不純物の持ち去りが充分にできる点に顕著な作用が得られることを強調して、登録されるに至つたのである。

以上によれば、本件発明の構成要件B<2>の「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」とは、その出願の経緯からしても、まさに「ほぼ矩形(ほぼ長方形)の平らな先端面を有する突条」を意味するものであり、右以外の形状の突条、すなわち、外形がV状の作用面を有する形状の突条等をこれに含めるように拡張的な解釈をすることは、右の出願の経過に照らし、許容しえないものであることは明らかである。

2  対比

被告装置の構造b<2>の突条は、前記第二、一5のとおり、「作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する左右突条(109a)及び高低2段で低い段が左右突条(109a)の突条と同じ高さである該作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する中央突条(109b)」であり、いずれもほぼ円弧状の先端面を有する構造となつているものである(右各突条の先端面の具体的な円弧状の形状については、別紙被告装置目録第2図ないし第6図、第8図、及び第9図に示すとおりである。)。

右によれば、被告装置の構造b<2>の左右突条(109a)及び中央突条(109b)は、いずれも「ほぼ円弧状の先端面」を有しているものであるから、これらの先端面が文理解釈上「ほぼ矩形(ほぼ長方形)の平らな先端面」に該当しないことは明らかであり、被告装置の構造b<2>の「ほぼ円弧状の先端面を有する左右突条(109a)、中央突条(109b)」は、いずれも本件発明の構成要件B<2>における「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」の要件を充足しないものであると認められる。

原告らは、第二、三1(三)(1)イ<1>において、本件発明の構成要件B<2>の「平らな先端面」は、幾何学的に平らなものに限られず、突条の高さの五ないし一〇パーセント程度の変動は誤差の範囲内であり、被告装置の「ほぼ円弧状の先端面」も「平らな先端面」に含まれるとか、同<2>において、矩形の両肩部をアール面としたものは「ほぼ矩形」とも「ほぼ円弧状」ともいうことができ、本来の作用効果を奏する限り矩形に類似する形状も本件発明に含まれるとか、あるいは、同<3>において、特許請求の範囲の記載の補正に対応して明細書の作用効果の記載は一切補正されていないのであつて、突条のもつ技術的意味はその補正の前後において同じであるから、原告らの前記主張は禁反言の原則に反しない旨主張するが、本件発明は、前記のとおり、本件フランス公報に記載の公知技術における外形V状の作用面を有する突条と比べ、「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条」を具備する点にその新規性があるのであり、原告エービーテトラは、本件発明の突条の形状を右のように限定することにより特許として登録を得たのであるから、限定された突条の形状の要件について、文言解釈を超えてこれを拡張解釈すべきとする原告らの右主張を採用することはできないものである。

以上によれば、被告装置の構造b<2>の左右突条及び中央突条は、いずれも「ほぼ円弧状の先端面」を有しており、本件発明の構成要件B<2>における「ほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」との必須の要件を充足しないものであり、被告装置は、本件発明の技術的範囲に属しないものと認められる。

二  よつて、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。

(裁判長裁判官 設樂隆一 裁判官 橋本英史 裁判官 長谷川恭弘)

被告装置目録

一、構造の説明

熱可塑性材料層(103)、導電性材料層(104)および繊維質材料の支持層(101)の積層材料同士(110、111)を、該熱可塑性材料層(103)が接触するように互いに重ね合わせ、これら材料同士(110、111)をシール帯域(113、114、115、116)内でシールジョウ(105)とゴム製対向ジョウ(112)との間で圧して加熱し、シール帯域(113、114、115、116)内で、前記積層材料同士(110、111)をヒートシールするための装置であって、前記シールジョウ(105)は、前記対向ジョウ(112)へ前記積層材料同士(110、111)を押しつけるための押圧表面を有する本体(106)と、前記本体(106)の押圧表面に設けられ、作用面と該作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する左右突条(109a)および高低二段で低い段が左右突条(109a)の突条と同じ高さである該作用面から突出するほぼ円弧状の先端面を有する中央突条(109b)とを有する導電性加熱棒(107)とを含み、前記加熱捧(107)に高周波電力を印加しつつ、前記本体(106)の押圧表面で前記対向ジョウ(112)へ前記積層材料同士(110、111)を押しつけるようになっており、前記左右突条(109a)のほぼ円弧状の先端面では前記シール帯域(113、114、115、116)の長さ方向の両端部でかつ外縁(E)寄りの部分を、中央突条(109b)のほぼ円弧状の先端面では前記シール帯域(113、114、115、116)の長さ方向の中央部でかつ外縁(E)にそう部分をそれぞれ押しつけるようになっている包装材料をヒートシールする装置。

二、図面の説明

第1図 被告装置のシールジョウ及び対向ジョゥの側面図

第2図 第1図において矢印Ⅱで示す箇所の拡大正面図

第3図 被告装置の底面図

第4図 第2図においてⅣ-Ⅳ線で示す箇所の拡大断面図

第5図 被告装置のシールジョウおよび対向ジョウが左または右の突条のある部分において積層材料同士をヒートシールしている状態を示す説明図

弟6図 被告装置のシールジョウおよび対向ジョウが前者の中央突条のある部分において積層材料同士をヒートシールしている状態を示す説明図

第7図 被告装置のシールジョウ及び対向ジョウが積層材料同士を突条のない部分においてヒートシールしている状態を示す説明図

第8図 被告装置のシールジョウおよび対向ジョウにおいて左または右の突条のある部分の左右全体を示す断面図

弟9図 被告装置のシールジョウおよび対向ジョウにおいて前者の中央突条のある部分の左右全体を示す断面図

第10図 被告装置のシールジョウおよび対向ジョウにおいて突条のない部分の左右全体を示す断面図

第1図

<省略>

第2図

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第3図

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第4図

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第5図

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第6図

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第7図

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第8図

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第9図

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第10図

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手続補正書

平成4年9月30日

特許庁長官殿

1.事件の表示

昭和57年特許願第177486号

(平成4年8月31日付審判事件)

2.発明の名称

包装材料をヒートシールする方法及び装置

3.補正をする者

事件との関係 請求人

名称 エービー テトラ パック

4.代理人

居所 〒100東京都千代田区大手町二丁目2番1号

新大手町ビルヂング331

電話(3211)3651(代表)

氏名 (6669)浅村皓

5.補正の対象

明細書の特許請求の範囲の欄

6.補正の内容 別紙のとおり

『2.特許請求の範囲

(1) 熱可塑性材料層(3)、導電性材料層(4)および繊維質材料の支持層(1)の積層材料同志(10、11)を、該熱可塑性材料(3)が接触するように互いに重ね合わせ、これら材料同志(10、11)をシール帯域(13、14)内で圧して加熱し、しかしてシール帯域(13、14)の中央部分(13)をさらに強く圧するようにして、加熱溶融した前記熱可塑性層(3)の材料を前記導電性材料層(4)の表面から流出させて、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料により流出した溶融材料がせき止められるようになし、しかる後に冷却して該溶融材料を堆積固化させるようにして、前記積層材料同志(10、11)をヒートシールする方法において、前記導電性材料層(4)に高周波を印可することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し、さらに該積層材料同志(10、11)は、前記シール帯域の中央部分(13)を、突起(19)のほぼ矩形の先端面で圧するようになっていることを特徴とする包装用積層材料をヒートシールする方法。

(2) 特許請求の範囲の第1項に記載の方法において、前記積層材料は、前記シール帯域(13、14)の両側で冷却されるようになっていることを特徴とする方法。

(3) 熱可塑性材料層(3)、導電性材料層(4)および繊維質材料の支持層(1)の積層材料同志(10、11)を、該熱可塑性材料(3)が接触するように互いに重ね合わせ、これら材料同志(10、11)をシール帯域(13、14)内でシールジョウ(5)と対向ジョウ(12)との間で圧して加熱し、冷却固化させるようにして、前記積層材料同志(10、11)をヒートシールするための装置において、

前記シールジョウ(5)は、

前記対向ジョウ(12)へ前記積層材料(10、11)を押しつけるための押圧表面を有する本体(6)と、

前記本体(6)の押圧表面に設けられ、作用面と該作用面から突出するほぼ矩形の平らな先端面を有する突状(9)とを有する、導電性加熱棒(7)と

を含み、前記加熱棒(7)に高周波電力を印加しつつ、前記突状(9)のほぼ矩形の平らな平面で前記シール帯域(13、14)の中央部分(13)を押しつけ、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分でせき止められるようになっていることを特徴とする装置。』

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